「映画ハピネスチャージプリキュア!人形の国のバレリーナ」感想


 毎年恒例、秋のプリキュア劇場版。


 ひぐらしのなく頃にシリーズで知られる今千秋を監督に招いての本作。そのためか今までの劇場版とは若干毛色の違う、しかし女性らしい細やかな仕事の光る、なかなかの秀作。「ハトプリ」は別格としても、それ以降のシリーズでは1、2を争う出来と評したい。

 謎の少女・つむぎの願いでドール王国にやってきたハピネスチャージプリキュアが、サイアークの魔の手から王国を救うため大活躍…とまあ、あらすじを聞いただけで大体の話の流れが分かってしまう、毎度お馴染みの親切設計ながら、キャラクター描写、特にラブリーさんつむぎの内面の描き方が素晴らしい。

 常に誰かのために無条件、無計画で突っ走るラブリーさんが、個人の力ではどうする事も出来ない状況、抗う事の出来ない不条理にぶち当たり、自分の無力さを痛感させられるも、それでも自分にできる事をと再び立ち上がる過程もさる事ながら、本作のキーパーソンであるつむぎの、ある目的のためにプリキュアを王国に招待し、自分を助けたいと手を差し伸べるラブリーさんに暴言を浴びせてしまうも、自らの過ちと未熟さに気づき涙する、彼女本来の優しさを丁寧に掘り下げ、爽やかな友情劇へと昇華させている。

 クライマックスのラクルライトにも、それが効果的に作用しており、同時につむぎ自身の心の変化と成長を描いている点もグッド。既に定番化している演出に一手間加える事で、何か別の新しい意味合いを持たせるとは、これも外注スタッフを入れた事による良い化学反応なのだと思いたい。

 また、ひめ様ドール王国の王子・ジーの恋話(?)を絡め、コメディリリーフとする事で、シリアスになり過ぎないよう、適度なクッションとして機能している点にも注目したい(冷静に書くと、随分酷い言い草だな)。クッションが利き過ぎて、逆に場が白けてしまうシーンも多少あったものの、それもまた彼女らしさという事で、大目に見よう。

 不満点を挙げるなら、やはり敵役・ブラックファングと、つむぎの関係。若干ネタバレになってしまうが、せっかく上記した友情劇の下地があるのだから、単に「こころおきなくブン殴れる」「圧倒的に悪いヤツ」(プロデューサー談)とはせず、例えば何らかの事情で(本編とは別の理由)足が動かなくなったつむぎを想うあまり、ジーが闇の力で作り上げたのが〜といった具合にした方が、プリキュア共通のテーマの一つ「敵を赦し、友達になる」にも繋がったように思われる。
 さすがに、あまりに現実的でヘヴィな題材を扱うと、チビッコ達がドン引きしてしまう事を考慮しての事と勝手に察するが、そこはもう少し、ハードルを高くしても良かったのでは。もっとも、本作のテレビシリ−ズでは、このあとラブリーさんのママンのエピソードが控えている(はず)ので、カブるのを避けたとも考えられるが…。

 とはいえ、世の中の「どうしようもなさ」に直面した時、人はそれとどう向き合い、どう受け容れていくか(あるいは、どう抗っていくか)というテーマを分かり易く咀嚼し、違和感なくバトルヒロインものに取り入れた手腕は、脱帽せざるを得ない。
 最終決戦のシーンも、異常なほどの熱量大放出っぷりで、ゆうゆう戸松っちゃんの扱いがイマイチだった点と、結局ふなっしーは何しに来たんだ?等はさておいても、充分金を払って観に行く価値アリ。

 ところで、来年のオールスターズ。予告映像を観る限り、どうやらみんなで歌って踊っての、ステージショー的な内容になる、らしい(多分)。まあ、さすがにメンバーが20人越えた辺りから、これを一つの物語で全員動かすのは不可能だろうと思っていただけに、「NewStage」よりは妥当な判断といったところか。
 もし、この調子で来年以降も制作するなら、スーパー戦隊「VSシリーズ」よろしく、新旧二組か、あるいは選抜制にするべきではないかと、適当な提案をしておく。それ以前に来年以降もプリキュアがあれば、の話しだが…(ちなみに新シリーズは準備中との事)。

 ☆☆☆★★+++

 で、結局誠司くんは何しにドール王国行ったん?(暴言)星3つプラス3つなっしーーー!!梨汁ブシャーーーーッ!!