「フライト・ゲーム」感想


 「アンノウン」ジャウマ・コレット=セラ監督、「96時間」シリーズリーアム・ニーソン主演。高度12000mを飛行中の旅客機内、航空保安官の下に送られてきた謎の脅迫メールをきっかけに巻き起こる、搭乗者146人全員人質にして容疑者の密室サスペンスアクション。

 序盤から意味ありげなカットや、登場人物のわざと注目を引きつけるような言動を散りばめ、観客のミスリードを誘う。どっかで観た事ある手法だなーと思いきや、同監督のエスター」とまったく同じやり口だった。
 世間では高評価されているエスター」であるが、個人的にはかなり早い段階で上記の演出がフェイクだと分かってしまい、あとは彼女の正体を含め、消去法的に予想したとおりの結末だったため、それほど面白いとは思わなかったものの、今回のそれは適度に緊張感もあり、また最後まで犯人を特定しにかったという点において、ズバリ采配が的中したと言える。

 主人公のアル中航空保安官を演じるリーアム・ニーソンも、職務を全うせんとする生真面目さと、粗暴でいかにも胡散臭い風貌とが悪い方向に作用し、乗客の信用をまったく得られず、孤軍奮闘を余儀なくされる設定も面白く、さらに脅迫犯によってハイジャック犯へと仕立て上げられていく展開も、なかなかにスリリングで見応えがあった。

 ただそれだけに、事件の真相、特に犯人の正体については、もう一、二捻り欲しかったところ。少々ネタバレになってしまうが、例えば搭乗した人物全員、あるいは半分以上が犯行に関わっており、その上で極右派や超国家主義支持者、あるいは単に金で雇われた者達による人間模様を取り入れれば、より良いモノになったのではないかと、勝手に推測する。

 こういう作品は、主人公が与り知らないところで、話しがどんどん進んで行く、いわば置いてけぼりを食らうぐらいの方が面白いと思っているのだが、主人公が捜査する一方で、犯人側も正体が分からない程度に、または協力者の一人を使って作戦を遂行(当然、そいつは途中で殺される 笑)、さらにそれを保安庁が別ルートで調査、といった具合に、2、3つの視点が同時進行するぐらいの厚みはほしかったところ。せっかくヒロイン役になぜかジュリアン・ムーアが出演していたのに、特においしいポジションでもなしとは、何とももったいない。
 何なら、途中からハンニバル・レクター教授が出てきて、犯人もろとも乗客全員皆殺しにする超展開でも(ネェヨ)。

 まあしかし、メールの視覚効果といい、ラストの着地シーンといい、光る部分も多々あり。わざわざ映画館に足を運ぶほどではないにせよ、ツタヤで何気なく借りたら「あっ、意外と面白いじゃんコレ」となるだろう作品。でも失礼ながら、正直この監督は「ウソのつき方」がヘタなので、今後はサスペンスやスリラー以外のジャンルに挑戦していただきたい。


 ☆☆☆★★+

 てかさ、最近のこの手の映画にありがちなミスリード誘発パターン「わざと容疑をかけさせて、主人公の手で誤解を解かせる」「自分が被害者になる」、もう止めにしない?そういうヤツが出てきた時点で、そいつが犯人だって大体わかっちゃうんだよ…。星3つプラス!!


 なんでやねん(笑)。