「ルパン三世」感想


 違う、コレじゃない。




 モンキー・パンチ原作の国民的人気アニメを、「念力珍作戦」以来実に40年ぶりに、「あずみ」北村龍平監督宇宙兄弟小栗旬主演で実写映画化。

 ちなみに、本作で脚本を担当した水島力也氏と、プロデューサーの山本又一朗は同一人物である。念のため。

 さておき。聞くところによると、企画の段階からほぼ全員「ファンを失望させるだけ」と否定的だったという今回の実写映画化。今にしてみれば、なぜ誰もその時もっと真剣に止めなかったのかが悔やまれる、まったく案の定の出来だった。

 まあ正直、何からツッコんでいいのかすらよく分からんが、「あの人気アニメ(コミック)、待望の実写化!」なんて、誰が待ち望んでんだクソバカというこの手の映画のお決まりパターン「原作の糞改悪による糞シナリオ」「ムダに金のかかったコレジャナイ感満載のコスプレ」「ダメアクションとダメキャメラワーク」の三拍子、ついでに「無意味で冗長なシーンの連続による、無駄な長尺」も加えた四拍子を、恥ずかしげもなくぶちかましている辺り、既に壊滅的としか言いようがない。

 ワールドワイド感を出したかったのか、シンガポールやタイといったアジア諸国を舞台にしたのはこの際ヨシとして、おかげで外国人キャストだらけのゴチャゴチャな感じになったばかりか、吹き替えによる文字どおり「取ってつけたような」ちぐはぐで違和感バリバリの絵になってるのが、まずいただけない。しかも、彼らと話す時だけ(だと思うが)日本人キャストまで何故か自分の口パクにアテレコするという、まったく無駄な手間をかける事で、その多国籍というより無国籍、自由奔放というより無軌道な作品の雰囲気を、さらにおかしなモノへと昇華、もとい劣化させている。

 いちいちアニメを意識した台詞回しやアクションも鼻につき、さらにそれが一つもカッコよくないのだから、目も開けていられない。全体的に漂うモノマネ観は詮方ないにしても、「裏切りは女のアクセサリみたいなもんさ〜」なんて台詞、ちょっと間違えたら、否、間違えなくても普通に相当痛いのだから、どうやったらそれがカッコよく映るのか、もう少し考えていただきたかったところ。少なくとも、あの世界観とあの状況なら、ハンフリー・ボガードだって決まらない。

 付け加えて言うなら、小栗ルパン玉山次元はまだ許容できるとして、やはりというか何というか、黒木メイサ峰不二子役はまったくもってムリがあったと言わざるを得ない。
 上記した件もそうだが、はっきり言って彼女に、世界一の大泥棒が虜になる魔性の女という魅力はほぼ皆無。別に、彼女自身に女性としての魅力がないと言っているのではないが、演技力その他諸々を含め「様になってない」印象。せっかく大胆な下乳披露にも関わらず、非常に品のない表現をすれば「ウッヒョ〜、コイツぁたまんねぇぜ〜!!」とチ○コが反応するほどのモノは、感じられなかった。

 カーチェイスだの殴り合いだのある度に、毎秒ごとにカットが切り替わるアホ編集もさる事ながら、それをわざわざ至近距離が撮って迫力を削いでいるアホすぎるキャメラワークにも、ただただ呆れるばかりで、そしてそのどれもが、やはり奇跡的なまでにカッコよくないのもマイナス、を通り越して痛恨の失格ポイント。
 せっかくのオリジナルキャラクターも、大して上手く扱えているとは言いがたく、まして敵キャラにいたっては、いかにもなコワモテロングコードと、いかにも薬キメてそうなモヒカンと、いかにも頭も下半身もゆるそうなチャンネーと、一体何十年前のVシネですか?てな具合。本当にこんなので面白いものが出来るとでも思ったのだろうか、ナンセンス。
 アクションについてのみ言及するなら、せめてチェイスシーンで、五ェ門が追跡してくる車を斬鉄剣で真っ二つに両断、あるいは次元と敵のロングコートが早撃ち対決、ぐらいの事は当然やるべき。その程度も実写で再現できないのなら、ハナからこの企画は破綻している。


 おそらくは、和製「ミッション・インポッシブル」的なモノを目指したのだと察するが、完成度も緊張感も爽快感も本家に、もちろんアニメにも遠く及ばない、極めてグッダグダな内容。本来隣に並べるのも胸くそ悪いが、同じくルパンシリーズの最新劇場アニメ作品次元大介の墓標の満足度を100とするなら、コレはぶっちゃけ1にも満たない。根本的な事を言ってしまうが、どうしてコレを「ルパン」として撮ったのか、果たしてモンキー・パンチ先生は納得されているのか、大いなる疑問だけが残ってしまった格好である。


 これまでも何百回と言ってきた事だが、ちょっとでもネームバリューのある作品を実写化すれば、勘違いした客が来てくれるだろうと安易に考えているのか、はたまた単にネタ切れなのかは存じ上げないが、どうせやるならるろ剣ひみつのアッコちゃんといった成功例もあるのだから、ちゃんとファンが観て納得できるもの、金払っても惜しくないと思えるものを提供していただきたい。
 そして、今のコレは過去の資産の食い潰しに過ぎず、将来的に日本映画界を瓦解させる事に直結していると、いい加減気がついていただきたいと、合わせて提言する。こんな事をやっとるから、邦画はいつまで経ってもハリウッドの足元にも及ばんし、バカにしてるアニメにも勝てんのじゃ!!


 「ルパン」としてもダメだし、一本のアクション映画としてもまるでダメ。他にも言いたい事は山ほどあるけど、この言葉に全てを集約する。

「またつまらんものを観てしまった…」

 ☆☆★★★

 情状酌量の余地なし。今回は一ファンとしてちょっと怒ってます。星2つ!!


 本作のスタッフは、コレ観て本物の「ルパン」とはどういうものか勉強し直したらいいと思うよ。まあ、二度と同じスタッフで作ってほしくはないけど(割とガチ)。