「ポリス・ストーリー/レジェンド」感想


 世界のアクションスター、ジャッキー・チェンの最新作は、年老いた刑事がともに人質となった娘を救うため、謎の篭城犯に戦いを挑むアクションサスペンス。

 ちなみに、タイトルに「ポリス・ストーリー」と付いているものの、過去シリーズとの関係は特にないとの事。

 さておき、前作のライジング・ドラゴンでアクション大作の引退を表明したジャッキーだが、曰く「監督に騙されて(笑)」、本作でも還暦とは思えない動きを披露。
 さすがに、全盛期のようなキレはなく、並み居る敵をバッタバッタというわけにはいかないものの、体力で勝る若者にやや圧倒されつつも、老獪なテクニックでこれを翻弄し、最後は熟練の技で平伏させる、年相応のアクションを観せてくれる。
 かつて世界中のファンが熱狂した、コミカルでカッコいいカンフーはほぼ皆無、代わりにより実践的な、しかしお世辞にも派手とは言い難い護身術や逮捕術といったモノにシフトされてはいるが、渋みを増したジャッキーの表情と、長年汗と泥にまみれて懸命に職務を全うしてきたであろう男の哀愁と寂寥とがうまく相乗し、演じる老刑事の人物像を、より深いモノに高めていると感じた。

 ストーリー面もまた、ジャッキーの純粋な俳優としての側面が存分に生かされた内容でありながら、敵役を演じるリウ・イエをはじめとする登場人物それぞれの個性が尊重され、群像劇としての完成度もグッド。
 決して単純な悪党とは言い切れない犯人達の言動と、徐々に明らかになっていく彼らの動機と目的、そしてクライマックスに向けて加速度的に展開される真実に、多少詰め込みすぎな観こそあるとはいえ、非常に見応えのある仕上がりになっていた。

 確かに、代名詞とも言えるカンフーアクションを封印し、一俳優としてジャッキーを評価してみようと言ったところで、そして実際、かなり高いポテンシャルを持っていたところで、多くのファンにとってジャッキー=アクションであり、いくら彼が巧みな話術で相手を丸め込み、心理戦で場を支配するクレバーな芝居を披露したとしても、本当に観たいのはそこら辺の椅子や小道具を武器に替え、堆く積まれた段ボールに突進し、生きてるのが不思議なくらいの壮絶スタントに身を投じる、稀代のスーパーアジアンアクションスターの姿に違いあるまい。
 プロレスに例えるなら(余計ややこしくなるかもしれんが…)、去年引退した小橋健太が、現役続行のためにそれまでの全力パワーファイトという自身のスタイルを捨て、関節技やマットレスリングを駆使するテクニカルファイターに転向したならば、仮にそれが驚くほど達者だったとしても、ファンは「こんなの小橋じゃない」と落胆する事だろう。
 時の流れ、と言ってしまえばそれまでだが、やはり誰も老いには勝てず、遅かれ早かれ最前列から身を引き、後進に未来を託す日はやってくる。分かっているつもりだが、否、分かり切っている事だけに、何とも寂しく、哀しい事だ。

 とはいえ、それでも小生は今後もジャッキーを応援していきたい。例えアクションをしなくとも、段ボールやガラスに突っ込まなくとも、電飾の付いたシャンデリラを素手で滑り降りなくとも、実は密かに、性格俳優としての彼を評価している点も含め、今後も彼の出演作が公開されるたびに、可能な限り鑑賞しに行くだろうし、それがファンというものだと信じる。


 まあしかし、その前に肝心のジャッキーの後進となる逸材に、そろそろ出てきてほしいなーとも思っているのだが(笑)。この10年ぐらい、アジアの各地からニューウェーブが現れては消え、現れては消えしているような気がするが、やはりジャッキーほどのインパクトを残すのは難しいのだろうか…。つーか、トニー・ジャーどこ行った?トム・ヤム・クン2」日本公開まだー?


 超簡単だけど、今回はこの辺で。

 ☆☆☆★★++

 そういや「エクスペンダブルズ3」出演の話しはどうなった?星3つプラスプラス!!