「キック・アス/ジャスティス・フォーエバー」感想


 2010年公開以来、世界中でスマッシュヒットを飛ばしたヒーロームービー「キックアス」の続編。

 本国アメリカでは、前作が公開されるや否や空前の大ブーム。本編さながらに自作のコスチュームに身を包み、街を守るべく自警活動を行うヒーロー達が急増したという(というより、大半は単にコスプレして夜な夜な歩き回ってただけらしいが)。そんなわけで、まさに全世界待望、満を持しての続編登場と相成ったのだが、残念ながら期待値には遠く及ばない、かなりユルユルな内容だった。

 まず何より、脚本が絶望的に酷い。本作を観に来た観客の多くがもっとも求めていたであろう、クロエ・グレース・モレッツ演じるミンディ=ヒット・ガールの出番が思いのほか少なく、さらに中途半端な青春グラフティ要素の介入で、場面は一気にどっちらけムード。ライター的には、ミンディの普通の女の子としての部分を出してみたかったのかもしれないが、イケメンアイドルグループに胸ときめかせ、クラスのハイソ気取りの女子とつるんでダンスを踊る彼女など、誰も見たくない。
 後述するデーブ=キック・アスの件との相性も悪く、いい意味でチープさとB級臭さが売りだった本作が、悪い意味でチープでB級臭くなってしまっている。可愛い顔して悪党共をバッタバッタとなぎ倒し、暴言とともに颯爽を去っていく、そんなクールでクレイジーでキュートな、本作の世界観を象徴するシンボル的存在こそがヒット・ガールであり、皆が熱望するモノであると断ずる。それが揺らぐという事は、すなわち作品世界の崩壊に等しい。

 また、一応の主人公であるキック・アスについても、これまたヒーローになる事の功罪と代償なんてありがちなテーマを、何の捻りもなくぶちかましてくる安直さ。そんなものは、どこぞの蜘蛛男パンツ被った変態の映画で散々やってきたのだから、もっとなりきりヒーローならではの、特別な存在じゃないからこそ出来る何かまで、踏み込んでほしかったところ。その「何か」は、よく分からんけども(エー)。

 敵役のレッド・ミスト改めマザー・ファッカーはただのアホなガキで、カリスマ性も説得力もピカレスク的な魅力もまったく無し。金の力で集めたワル達、特に唯一まとも(?)な悪党であるマザー・ロシア辺りが、後半あっさりと謀反を起こして組織を乗っ取る、なんて展開の一つもあればいいものを、当然のごとく何にも無し。
 もっと言うなら、せっかく天下のジム・キャリーが参戦しているというのに、演じるスター・アンド・ストライプス大佐のキャラに何の面白みもなく、わりとどうでもいい役回りという無駄遣いっぷり。一応、それなり重要なポジションにいるにはいるのだが、得意の変顔もキモい動きも一切なしで、そもそも彼が演じる必要あったのか?と首を傾げるばかり。

 「ゲロゲリ棒」とか、今日日レスリー・ニールセンかよ!と突っ込みたくなるような昭和のお下劣アイテムも時代錯誤だし、クライマックスの乱闘にいたってはC‐C‐B「Romanticが止まらない」が聴こえてきそうなグダグダっぷり。徹頭徹尾、「思いがけず人気出ちゃったら、ムリヤリ続編作っちゃいました」観とコレジャナイ感満載で、勇んで映画館に足を運ぶと、ガックリ肩を落として帰路に着く事必至。


 噂によると、当初の予定ではヒット・ガールを主人公にした外伝的ストーリーになるはずだったそうだが、ならば何故そうしなかったのか甚だ疑問。何となく「3」もありそうな気配だが、次もこの路線で撮るつもりなら、正直ノーサンキュー。


 ☆☆☆★★−−−

 つーか、キック・アスの正体をバラしたアイツに、何の断罪もなかったのが一番引っかかった。何だかんだでクロエが可愛かったんで、大マケにマケて星3つマイナス3つ!!