「黒執事」感想


 「NANA」大谷健太郎×TIGER & BUNNYさとうけいいち監督仮面ライダーカブト水嶋ヒロ主演(兼・共同プロデューサー)。枢やな原作「月刊Gファンタジーにて連載中の人気コミックを、原作から130年後の世界を舞台にしたオリジナルストーリー(作者承認)で実写映画化。


 原作は未読ながら、全国のファンから「無理ありすぎ」「やめとけ」「シバくぞ」の大合唱が容易に想像できる本作。結論から言えば、想像通り適度にユルい、しかし金払う価値もないほどの酷さではない、そんな内容だった。

 基本、水嶋ヒロ演じる執事セバスチャンと、ゴーリキー演じる彼の主人で幻蜂家の若き当主・清玄による捜査&推理ミステリーだが、一般的なそれと比べて、非常にまったり。設定上、ファンタジー色が若干強めなのはこの際脇に置いとくとしても、明晰な頭脳の持ち主というわりに随分と行き当たりばったりな上、やたらとご都合な展開が目立つ。
 また、この手の映画にありがちでありきたりなストーリー展開に加え、かなり早い段階から事件のあらましが予測できてしまうのは実に致命的で、その上要所要所の「間」の取り方や台詞回しも極端に悪く、そのためか全体的に緊張感に欠けるのも、手痛いマイナスポイント。一体誰が監督やってるんだと思いきや、あの絶望的にクソつまらない事でそんなに有名じゃない「ランウェー☆ビート」の人と知り、妙に納得してしまった。
(一応、「タイバニ」さとうけいいちも共同監督としてクレジットされているが、おそらくアクションシーンなど一部にしか関わられてないのではと邪推する)

 いつもなら問答無用で星2つ、場合によってはマイナスが一つか二つついてもおかしくない出来ながら、それでも、そこそこ観られる内容になっているのは、ひとえに水嶋ヒロの存在感によるところと断ずる。
 イケメンなのはもちろん、純潔の日本人なのにどこか異国情緒溢れる顔出し。燕尾服を自然に着こなす上品な立ち振る舞いとスタイルの良さ。そして何より、彼独特の(少々悪い言い方をすれば)何とも言えない怪しさと不気味さを併せ持った雰囲気。そのどれもが、「あくまで執事」セバスチャンのキャラクターに見事マッチし、同時に荒唐無稽で噴飯モノと一蹴されかねない本作の世界観に、確かなリアリズムをもたらしている。
 彼がいなければ、本作の完成はありえなかったと言っても過言ではあるまい。高い身体能力を生かしたアクションシーンもなかなかの迫力で、まさに天道総司以来のハマリ役。できれば今後、彼以外の出演陣、スタッフを総入れ替えしたスピンオフ映画、あるいはテレビシリーズを一本撮っていただきたい。原作ファンからはまたも大ブーイングだろうが(笑)。

 その他の出演陣について特筆するなら、優香の怪演っぷりが思いのほか凄く、逆に笑ってしまった事ぐらいか(エー)。お世辞にも決して上手い芝居ではないものの、かつて彼女が巨乳アイドルとしてブイブイ言わせていた頃を思い出せたのは、意外な収穫と言えなくもない。
 また個人的に、山本美月演じるドジっ子眼鏡メイドが、某ロベルタさんを彷彿とさせてよかった。とはいえ、もし仮にあの作品が実写化されても、彼女にロベルタさんを演じてほしいわけではないのであしからず(エーー)。つーか、絶対に実写化するな(エーーー)。


 「THEプロペラダンサー」「ゴリ押しの女王」ことゴーリキーについては…、いや、もはや何も言うまい。これからはアレはああいう生き物だと諦めて、何も期待せず、ただ生温かく傍観する事にしよう、ウン。ただ一つ苦言を呈するなら、あの役はもう少し背が低く、且つ「一見してどっちか分からんぐらいボーイッシュな美少女が演じるべきだったように思う。いつかの大原櫻子よろしく、オーディションで選べばよかったのに。


 例によって、いかにも続編ありますよー的な終わり方だったものの、よほどイレギュラーな事態でも起きない限り、きっとそんなモノは未来永劫製作されないだろう。とにもかくにも、水嶋ヒロのエレガントでスタイリッシュな姿に酔いしれるためだけの映画。彼のファンなら、とりあえず観て損はないかと。

 ちなみに、主題歌の作詞作曲は彼のカミさんだったりする(笑)。


 ☆☆☆★★

 一作品としての評価は、「あくまで」こんなもん。星3つ!!

【送料無料】映画黒執事VISUAL BOOK [ 枢やな ]

【送料無料】映画黒執事VISUAL BOOK [ 枢やな ]
価格:1,500円(税込、送料込)