「ジャッジ!」感想


 ソフトバンク「ホワイト家族」等を手がけるCMプランナー・澤本嘉光の実体験を基にした脚本を、いぬのえいが永井聡監督「悪人」妻夫木聡主演で映画化。

 ストーリーがそれほど悪いわけでもなく、出演陣の演技がダメなわけでもない。矛盾らしい矛盾も見当たらず、伏線もキッチリ回収されている。確かによく出来ていると言えば、よく出来てはいる。がしかし、これがまたビックリするくらいつまらない。これだけの好条件が揃っているにも関わらず、人も金もそこそこ使われている(っぽい)にも関わらず、もはや超常的に、奇跡的に、天変地異的に退屈極まりない内容。

 では、何故そんなにつまらなかったのか。まず第一に、シナリオが絶望的にダメ。80〜90年代のコメディそのままの、まるでセンスも新しさも感じられない展開は、観ていてコチラが恥ずかしくなってしまうレベル。CM業界の裏側を描くのはヨシとして、万年役立たずの広告マンが、中途半端な青臭い正義感振りかざして不正に立ち向かうなんざ薄っぺら過ぎて、仮に今日日「モーニング」辺りで連載されても、サンタモニカに辿り着く前に打ち切りになる事必至。
 おまけに、要所要所にブッ込まれるギャグが凍死するほどクソ寒いとくれば、もはや目も開けていられない痛ましさ。外国人の心を掴むのに、アニメキャラのTシャツ着て「アイム、ヲターク!」だと?色んなものをナメくさっとるとしか思えん。しかもそのチョイスがラムちゃんハルヒとか、ヲタ知識のないヤツがとりあえず誰でも知ってるっぽいキャラと、これさえ出しときゃヲタクが喜ぶだろうと思しきキャラを安直に選んだのがバレバレ。おそらくここのスタッフは、涼宮ハルヒシリーズがどういう物語かもほとんど知るまい。
 どうせなら、隣の北川景子セーラーマーズのコス着せて「火星に代わって、折檻よ!」ぐらい言わせればよかったものを。そのお手軽且つダダすべりの小道具に、ハルヒはともかく、尊敬する高橋留美子先生の傑作を持ち出さないでいただきたい。

 第二に、キャラクターがダメ。妻夫木聡演じる主人公にまったく感情移入できないばかりか、特徴づけのつもりのペン回しもただただウザく、間が悪くなるだけ。もちろん、北川景子演じる主人公の偽の妻、あるいは鈴木京香さん演じるベテランプランナーについても、まるで面白みを感じられない。
 理由としては、上記したいちいち漂うバブル臭に加え、登場人物が軒並み頭が悪く、また効果的にポジショニングされていない点、これにに尽きる。最近よく目にするタイ人タレント・ブンシリのまるで必要性のないオカマ設定、あるいはどう観てもブラジル人には観えない荒川良々演じるブラジル人広告マン等、結構豪華な出演者をチョイ役に使いながら、その良さをさっぱり生かしきれないお粗末さ加減。もし三谷幸喜監督が本作をご覧になったなら、この体たらくっぷりにさぞや激怒されるに違いない。
 だいたい、よほどの僻地に住んでるような人ならいざ知らず、そこそこ教養のある外国人なら「ニャーニャー」「すごく美味しい」という意味じゃない事ぐらい分かるだろ。この平成不況のご時勢、年中レイバンにアロハシャツのCMプランナーなんてどこにいるんだ。いい年こいて鼻たらしながら自社の竹輪しゃぶってるバカ息子と、そのバカが作ったクソつまらないCMをゴリ押しするバカ社長が経営する会社に、年間億単位の広告費なんてあるわけないだろ。
 そういう点に一切気づかず、ないし「面白い」と思ってやってる事自体、もう既に末期。客をバカにしている証拠といえる。これはもう、このシナリオとこのスタッフで面白い映画を撮る事そのものが、最初から無理だったのだと結論付ける他ない。ここまで来ると、もはやメルヒェンの世界だ。

 世の中には大小含め数え切れない映画賞が存在するが、もし本作がそれに出品したならば、作中の竹輪のCMよろしく「腰が抜けるほどつまらない」と瞬く間に弾かれるモノと察する。クソ寒いギャグ、安直で理不尽な展開、そして最後はイイハナシダナーと、今の邦画界のダメな部分が全部この中に詰まっている。
 今後我が国で映画を製作される方々には、本作を反面教師とし、なぜ日本映画に客が入らなくなったのかを今一度しっかり、原点に立ち返っていただきますよう、心から願う。

 ☆☆★★★

 褒められるところがありそうでまったくない。星2つ!!


 <注意>これが本作における、平均的なギャグのレベルです。続き、観たいと思います?

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