「二流小説家 シリアリスト」感想


 デイヴィッド・ゴードンの処女作にして、このミステリーがすごい!2012年版(海外編)第一位」「週刊文春ミステリーベスト10 2011年(海外部門)第一位」「ミステリが読みたい!2012年版(海外篇)第一位」の3冠を獲得したベストセラー推理小説を、猪崎宣昭監督上川隆也主演で映画化。
 官能小説で生計を立てる売れない小説家に届いた一通の手紙。それは4人の女性を惨殺した罪で収監されている、自称写真家を名乗る死刑囚からだった。


 「史上初のミステリー3冠達成!」「必ず貴方もダマされる」と、もはや林家木久扇師匠の似てるんだか似てないんだかよく分からない片岡千恵蔵の物真似レベルのお約束パターン全開な煽り文句だが(ちなみに我が父曰く「似てはないけども、あんなしゃべり方ではあった」そうな。ウン、意味が分からん)、正直この内容で、それも設定を日本に焼きなおしてまでわざわざ映画化する意義は感じられなかった。

 オチや事件の真相については、マナーとして言及を避けるものの、作中に散りばめられた伏線、あるいは事件の重要ポイントが、悉く噛み合っていないのがまず痛い。この手のミステリーは、一見バラバラに思える複数の要素が、事件解決に向けて一気に収束していく様こそ醍醐味であり、キモであると断ずるが、観るからに「ああ、やっぱりそうなっちゃいますよねー」としか言いようのない秘密(?)や謎(?)も含め、あまりにそのまんま過ぎる展開と、何のためにあったのか不明な部分、さらに後半、突然降って湧いたような無理やりサスペンスと、「本当にコレ、何とかいう賞取ったの?尺の都合で、原作の半分近く削っちゃってるんじゃないの?」と勘ぐりたくなるほどのgdgd加減に、ただただ愕然とするばかり。
 特に小生が首を傾げたのは、小池里奈演じる主人公の姪。一応、それなりに事件に絡む場面もあり、見せ場のようなものもない事はないものの、ぶっちゃけ存在そのものに必然性がなく、仮に最初からいなかったとしても何ら差し支えないほど浮いてしまっている。実は当初、小生は彼女を主人公の屋敷に取り憑いた幽霊か何かだと本気で思っていたが、アレなら幽霊の方がまだマシだったかもしれない。

 伊武雅刀賀来千香子さん本田博太郎といった豪華な出演陣が顔を揃えたものの、例によって効果的なキャスティングとは言いがたく、逆に配役を見ただけで誰がどんな役なのか推理できてしまうオッチョコチョイっぷりも、大きなマイナスポイント。個々人の演技力は非常に高く、仕事もよかっただけに、何とももったいない。
 中でも、物語の中心人物である死刑囚を演じた武田真治は、知性と凶暴性と異常な性愛を秘めた猟奇殺人者という何役を、彼の持てる技能を結集して臨んだであろう点は評価するものの、それだけに一周回ってやや没個性的になってしまったのはあまりに惜しい。
 「藁の盾」藤原竜也もそうだが、頭のネジが何本か外れたキャラクターを演じるのに、もうある程度のテンプレートが出来上がっている観がある。その壁を一刻も早くぶち壊し、もう一歩進んだ新しい悪役像の出現と体現する才能の登場を、一映画ファンとして切望するばかり。
 ユーザーも製作側も、そろそろヒース・レジャージョーカーで留まっているわけにはいくまい。こういうのは早い者勝ちだしね。


 凄惨な殺人現場とその写真だけがセールスポイントでは、とても1800円分の価値があるとは言えない。原作は未読ながら、この内容ならば2時間ドラマ、またはNHKWOWOWの全4〜6話の連続モノが妥当。そうでなくても、和書の中にも長年映像化が待ち望まれている作品が山のようにあるのだから、そっちを先に頼む。

 だから、「バキ」の実写映画化はまだなのかとッッッ!!(永久にムリです)


 ☆☆☆★★−−

 つーか人間の首ってあんな簡単に、且つ短時間で切れるもんか?星3つマイナスマイナス!!


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