「悪の教典」感想


 貴志祐介原作の同名小説を、三池崇史監督・脚本、伊藤英明主演で映画化。

 いたってごく普通のサイコスリラー。三池監督お得意の作風であり、それなりの仕事は見せてくれるものの、所々にアラが目立つ、少々残念な仕上がり。

 まず何より、最初から犯人が分かりきっているため、ストーリー構成が一本調子になると同時に緊張感までも失われてしまっているのは致命的。原作は未見だが、せめてサイコキラーは誰なのか、後半の大虐殺ギリギリまで正体を明かさない等、工夫が欲しかったところ。
 また、その伊藤英明演じるサイコキラーとポジション的に相対となる、いわばストーリーを別の軸から見るキャラクターの存在が、驚くほど弱いのも如何ともしがたい。単純に、パニックに陥った生徒達の群像劇を描きたかったとして、その危機をどうやって脱するのか、殺人鬼と対峙するのか、クライマックス以外にいくらかあってもよかった気が。

 
 サイコキラーの行動理念、及び言動が分かりにくく、何がきっかけで殺人を行っているのかはさておき、途中から「この人の目的、何だったっけ?」と首を傾げてしまいたくなるのも、大きなマイナス要因。
 自分をよく思わない相手であったり、邪魔な存在、あるいは証拠隠滅のため、というのは理解できるが、最後のアレは虚言なのか、それとも本当にそうなのか、何とも不完全燃焼なラストとも相俟って、何となく煙に巻かれたような気分。何もかも事細かく説明しろとは言わないが、ある程度の咀嚼は必要かと。


 そもそも、これまで何百人と殺してきたであろう、言わば殺しのプロ(?)が、あんな杜撰な隠蔽工作でいいのか?学校にいた全員が殺され、犯人も自殺している状況で、一人だけ手錠をかけられ職員室に幽閉されていたなど、どう考えても怪しいだろ。
 それ以前に、猫避けのペットボトルの水を灯油に変えるなど、そんなヒマがどこにあった。家の住民やご近所の奥様方にも気づかれないように、毎日一本ずつ交換していったとか?仮にだとしても、あのPMオヤジがあのタイミングでタバコをポイ捨てするなど、どうして分かる?発火するまでひたすら放置する作戦だったのか?まったく意味が分からないよ。僕と契約して魔法少女にn(以下略)。


 とにもかくにも、一つ一つの要素のディテールが甘く、全体の質を下げている印象。エンドカットを観る限り、近々続編が製作されるようだが、どうかその辺を考慮して撮影に臨んでいただきたい。


 単純に、後半の大虐殺が観たい人ならそれでヨシ。その中での人間ドラマが観たい人なら微妙。伊藤英明ファイヤーいいお尻が観たい人なら超オススメ(エー)。

 
 ☆☆☆★★−−

 てか、ショットガンをリロードしてる間にみんなで一斉に飛びかかれば倒せたんじゃね?ってのは禁句か(笑)、星3つマイナスマイナス!





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悪の教典〈下〉 (文春文庫)

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