「北のカナリアたち」感想
原作は刊行まもなく購入、読了。大幅な変更点、追加要素は見られるものの、吉永さん演じる元教師の教え子達の証言により、20年前に起きた悲劇の全容が、多角的に解明されていく過程はそのまま且つ、非常に見応えアリ。
お世辞にも若者向けとは言いがたく、派手さはないものの、登場人物それぞれがすれ違いと葛藤、時には誤解を繰り返しながら、長い年月を経てお互いを繋ぐ絆を確認しあうストーリーは、つい先日、あまりのショックに10日ほど寝込んだろうかと真剣に考えてしまう出来事を体験した我が胸中に、思いがけず深く染み入った。
(どんな出来事かはナイショ)
主演の吉永さんは、正直、(計算上)40代を演じられるのには相当ムリがあるものの(笑)、やはり画面に登場するだけで全て許されてしまうオーラのような、形容しがたい説得力がある。
某キムタクと同じく、もはや良くも悪くもシンボリックな存在ながら、不思議と他の出演陣をジャマせず、むしろ彼女だからこそここまでキレイにまとまった、ぐらいの感覚を憶えてしまうのは、52年間常に日本のトップ女優として君臨してきたがゆえの業か。
ここだけの話し、俗に「サユリスト」と呼ばれる熱狂的なファンを持つ彼女の魅力というモノの一片を、本作で初めて理解した気がする(エー)。確かに、あの人がもう半世紀生まれるのが遅ければ、昨今のそこいらの若手女優など、問題にならなかったに違いない。「生まれ持ったモノが違う」とは、まさにこういう事を言うのだろう。
彼女の6人の生徒達を演じた俳優陣、及び里見浩太郎氏、柴田恭平氏、仲村トオル氏と、各年代の実力者が顔を揃えただけあって、負けず劣らず実にいい仕事。
余談だが、小池栄子の小学生時代を演じた佐藤純美音は、あまりにそっくり過ぎて軽く吹きそうになった(笑)。今後彼女には、小池の子供時代のフィックスとして活躍していただきたいところ。
あえて苦言を呈すなら、作中のメインテーマの使い方について。ヴァイオリンの大袈裟なまでに悲壮観溢れる旋律は美しいのだが、あまりに壮大且つ何度も使用されるため、後半、何かコントのような可笑しさを憶えてしまった。せめてその都度違う曲を使うとか、他にやり方はなかったのだろうか…。
仲村さん演じる警官の立ち位置、クライマックスの展開に疑問を感じる人もいると察するが、原作ファン、というより湊かなえファンとしては満足の出来。
来年の1月には、同作者の「夜行観覧車」がテレビドラマ化されるそうなので、今後も港かなえ作品には目が離せないぜ!…という事で、本日はこの辺で(ナンダソリャ)。
☆☆☆★★++
星3つプラスプラス!!